アテナ(Athena)
- 以降に物語の核心部分に触れる記述を含みます。
- パッチ6.4及び「万魔殿パンデモニウム:天獄編」まで進めていない方、ネタバレを好まない方はこれ以降読み進めることをお勧めしません。
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概要
- ラハブレアの妻であり、エリクトニオスの母。初代パンデモニウム長官。
アテナ : 私はパンデモニウムの長官、「アテナ」。 ラハブレアの妻でありエリクトニオスの母……。 そして、冥界に大監獄を生み出した存在。
ラハブレア院でのアテナとパンデモニウム設立
- ラハブレア院の研究者だった人物で、のちパンデモニウムの初代長官となった。
エリクトニオス : パンデモニウムの先代長官、その名も「アテナ」。 もともとはラハブレア院の研究者だった人で…… 俺を獄卒へと登用してくれたのも、彼女さ。
ラハブレア : 彼女は、ラハブレア院でも将来を嘱望される俊英でな。 放っておくと、寝食すら忘れて研究に没頭するような、 根っからの研究者だった。
- ※なおテミスはパンデモニウム長官がラハブレアになってからしか知らない。
テミス : なるほど、ラハブレアが長官でなかった時代があったのか。
- やがてアテナは、「生命の神秘」についての研究に取り憑かれていく。
ラハブレア : そんな探究の日々の中で、アテナはいつしか…… 「生命の神秘」を完全に理解したいと願うようになっていたのだ。 ラハブレア : 人は、生物は創れても、魂は創り出せない。 そして、転身はできても、人の殻を破ることは不可能……。 その限界を超える存在となることを、彼女は夢想し始めた。 テミス : 自在に魂を創り出すような、人智を超えた存在を示す概念、 すなわち「神」に至ろうとしていたというのか……。 ラハブレア : 私は、ラハブレア院を治める立場として、 アテナとよく、人の限界を超える方法について語り合った。 魂の創造などは創造学的な命題のひとつであったからな……。
ラハブレア : しかし、思考実験を繰り返すうち……私は思いついてしまったのだ。 「人と創造生物の融合」により、人の限界を超えるという、 禁断の術式を……。 ラハブレア : アテナは私の閃きを見逃さなかった。 そして……私に食らいつき、術式を聞き出そうとしてきたのだ。 あらゆる方法を使って、な……。 エリクトニオス : まさか、俺という子が生まれたのも……。
- そしてパンデモニウムの設立を許可してしまう。
ラハブレア : 私は愚かしくも、アテナの真意に気がつけなかった。 パンデモニウム建設の際、彼女が長官の座を望んだときもそうだ。 ラハブレア : 研究者としても優秀だったアテナを、 長官の座に据えることに、なんの疑問も持たなかった。 そうして彼女は、自由に使える「実験場」を手に入れた。
- ※ただし天獄編ではアテナを閉じ込めるためだったと述べている場面がある。
ルイスノ : ……ラハブレア様が、人知れず呟いておられたのです。 「彼女の監視のために、パンデモニウムを建造したこと。 それ自体が間違いだったのだろうか」と。
クローディエン : 失敗作たる創造生物の研究施設とは、表向きの理由……。 パンデモニウムは、古代人の規範を外れていたアテナを、 収監するための「監獄」だったのです。 クローディエン : そうまでして、アテナに研究を続ける余地を与えたのは…… ラハブレアさんが抱いていた愛ゆえだったのでしょうか?
- ※ただし天獄編ではアテナを閉じ込めるためだったと述べている場面がある。
アテナが目指したものと「ヘファイストス」の誕生
- こうして設立されたパンデモニウムは、ラハブレア院のあるではなく、エルピスの近くに設立された。
- やがてアテナの真意を知ったラハブレアは、アテナを止めるべくパンデモニウムに乗り込んでいく。すでにアテナはエリクトニオスに手をかけようとするところであった。
ラハブレアの再現体 : アグディスティスと私を、いつまでも欺いておけると思ったか。 さあ、エリクトニオスを離せ。 ラハブレアの再現体 : 今なら、まだ間に合う。 だが、もしもエリクトニオスをその手にかけるようならば、 私の手で……。
- しかしそこでアテナの想いを知りたいという誘惑に抗いきれず、アテナと魂の融合を行ってしまう。
アテナの再現体 : ほかでもない、貴方の手でというなら本望だわ。 でも……どうせなら私の真意を知ってからにしてちょうだい。 ラハブレアの再現体 : ……研究を止めるつもりはないということか。 アテナの再現体 : 私のこの気持ちを知ってもらえれば…… 止めようもない激情なのだと、きっと理解してくれるはずよ。 ラハブレアの再現体 : 個人の想いなど関係ない。 その行いが、星にとって是か非かが問題なのだ……。
アテナの再現体 : ……知りたいのでしょう? 院の優秀な研究者であり、自分と子を成したほどの相手が、 何を想って、このような大それたことを始めたのか。 アテナの再現体 : 教えてあげるから、手を……。 言葉では足りない、究極の相互理解を……。
ラハブレア : そのとおり。 魂の境界を超えて、ふたつの魂を混ぜ合わせる。 アテナは自身を理解させるため、すべてを私に差し出してみせた。 ラハブレア : そして、このときの私は、 アテナの想いを知りたいという誘惑に、抗えなかったのだ。 ラハブレア : はたして彼女は、私を愛していたのか……。
アテナの再現体 : 我の想い、願い、それは汝となりて――
ラハブレアの再現体 : ――汝を、我とする。
- ラハブレアはなんとか魂の融合を解くが、ラハブレアの魂深くに刻まれた”アテナの研究に対する純粋な想いと生命の神秘を垣間見たい”という欲求は、ラハブレアの中に根付いてしまう。ラハブレアはその思いを断ち切るために、”弱き想い”を自ら切り離し魂を分断してしまう。これが後の「ヘファイストス」誕生に繋がってしまう。
アテナの再現体 : 残念……。 アテナの再現体 : でも、貴方は知ってしまった。 私の想いと共に、これまでの研究成果もすべて……。 アテナの再現体 : たとえ、何らかの手段で記憶をかき消したとしても…… 魂深くに刻まれた生命の神秘を垣間見たいという欲求は、 根を下ろし、貴方自身の渇望となるのよ。 ラハブレアの再現体 : ……ならば、魂ごと切り分ければ良いだけのこと。 昏き想いも、研究にまつわる知識も……! ラハブレアの再現体 : 此度の事態は、私の心の弱さが引き起こしたもの。 ならば私は弱き想いのすべてを切り離し、 今後はより一層己を律しよう。 ラハブレアの再現体 : ラハブレアたる者として……!
ラハブレア : かくして私は、アテナの魂に汚染された自己の魂を分割し、 クリスタルの内に封印したのだ。 ラハブレア : まさか、それが後に肉体を得て、 ヘファイストスと名乗ることになろうとは思っていなかったがな。
- 魂を切り離した影響で、ラハブレアはやや老境の粋に達したような風貌へと変化している。これによりエメトセルクやイゲオルムには怪しまれたのだという。しかもこうして切り離した魂を処分せず封印したことにより、別人格「ヘファイストス」の出現へと繋がり、万魔殿パンデモニウムのストーリーがスタートする。
万魔殿パンデモニウムへ
- しかし、アテナは結局ラハブレアに手をかけられ死亡するが、精神面での影響を受けた獄卒たちや、息子エリクトニオスにより神を生み出そうとするアテナの欲望は続いていく。
- また息子エリクトニオスは、終末を迎えて「ゾディアーク」で対抗しようとした十四人委員会の方針には従わず、密かにパンデモニウムの生物の保護に向かうが、その過程で自分自身とラハブレアの記憶をクリスタルに封じてそれを星の海に流す。
エリクトニオス : 未来の世界に、この記憶を残す。 エリクトニオス : エルピスにもまた、「終末」が訪れた。 創造魔法が暴発し、おぞましい獣が次々と生み出されている。 エリクトニオス : そんな絶望の只中にあっても、ラハブレアたち十四人委員会には、 この事態を収拾する秘策があるらしい。 エリクトニオス : そして、エリディブス……いや、テミスは、 そのために殉じるつもりのようだ。
エリクトニオス : だからこそ、俺は十四人委員会の方針には従わない。 この魂を、星の意思の召喚に捧げることなく、 成すべき使命のために残るつもりだ。
- この記憶のクリスタルは、第七星暦でのエリクトニオスの転生体であるクローディエンの手に入る事になり、光の戦士はエルピスのパンデモニウムへと訪れる。一方で黒聖石サビクはラハブレアが持ち続け、魔道城プラエトリウムで古代魔法アルテマを発動させた後、魔大陸アジス・ラーの魔科学研究所で死亡した(聖剣アスカロンに吸収された)際にその場に残っていた。
- クローディエンはさらに研究を進めるため波形の似たクリスタルを追い求め、魔大陸にて黒聖石サビクを発見する。そしてそこに込められたアテナの想いに触れることでその肉体を乗っ取られてしまい、アテナは復活を遂げる。そして案内役としてテミスを復活させ、天獄編3層で対峙させる。
???? : 君なら、ここまで来てくれると信じていたよ。 テミス : きっとまた、会える気がすると…… 私の言ったとおりだったろう? テミス : 何故、私がここにいるのか……順を追って説明させてくれ。 テミス : まず、私は本物のテミスではない。 この空間にたゆたう魂から、アテナによって創造された…… ラハブレアたちと同じ、記憶から生まれた影法師に過ぎない。 テミス : だが、状況については理解しているつもりだ。 ここが、はるか先の未来だということも含めてね。
- 転生した姿のテミスをも破った光の戦士は、遂にアテナと戦う。
アテナ : 神の力の一端を見せてあげる……! アテナ : 純然たる力を味わいなさい! アテナ : 渦なす生命の色、七つの扉開き、力の塔の天に至らん!
- 光の戦士に倒されたアテナは、それでも隙を伺う。
アテナ : 嗚呼、どうして私の邪魔をするの? 何年も何年も焦がれ、物言えぬ石に閉じ込もってまで耐えてきた。 その悲願の成就まで、あと一歩だというのに……! エリクトニオス : だから教えてくれ、アテナ。 研究の先……「神」となった身で、 この世界に、何をもたらそうというのか。
アテナ : エリクトニオス…… その問いを発するなんて、貴方に探求者の素質はないわね。 アテナ : 理論を完成させた後、知の探求者が望むことはただひとつ。 実践により、自らの理論が正しいのだと示すこと…… アテナ : そう、証明よ。 アテナ : 神となり、「生命」の神秘すら理解できるようになれば、 どのような生物も、望むままに生み出すことができる! 人を超越した高次の存在すら、容易く! アテナ : まだ未完で未熟な、人の命を糧として、 完全かつ美しき命を創り、この星を満たす……! それこそが、私の望みよ!
- それは世界の破壊であると否定するエリクトニオスに、アテナは人間(古代人)のやってきたこともそれと同じだと言い放つ。
エリクトニオス : 今を生きる者を蹂躙し、新たな生命とともに生きるなんて、 それはもう、世界の破壊だ! アテナ : 何が悪いというの? 私たちは、幾千幾万の月日に亘って、 この星にとって、より良いとされる生物を創造してきた……。 アテナ : 優れた生物が放たれれば、既存の弱き生命はやがて消えゆく。 いいえ、人が手を出さずとも自然界の内で起こる競争は、 進化と淘汰を促していくわ。 アテナ : そうした生物を、私が神として導いたとして、 いったい何を以て、「悪」と断じるというの? 別に構わないはずよ。 ラハブレア : 聖石は、人の「切なる願い」を具現化する性質を持つ。 つまり彼女が口にした願いは、ほかの誰でもない…… アテナの本心ということだ。
- そして、エリクトニオスの体も、そして母・アテナに従順な心すらもその目的のためにアテナの意思が反映されたものであり、素体に過ぎないと言われたエリクトニオスは、遂に母との決別を決意する。
アテナ : あら、気がついてなかったの? アテナ : 貴方を生んだのは、神の原型として利用するため……。 その肉体も当然、私と適合するよう「改良」を施していたのよ。 アテナ : ほかにも、私の言い付けに従うよう、 強い情愛を植え付けたり……いろいろと手をかけてあげたのに。 まさか、正面切って反発してくるなんてね。 エリクトニオス : この身体も、この気持ちも、 お前が利用するため生み出したものだというのか……? エリクトニオス : 母への情を捨てられない、魔法もうまく使えない落ちこぼれ。 そういった存在であれ、と…… 生まれたときからすでに決められていたわけだ。 エリクトニオス : 感じるはずのない痛みで、ようやくすべてを理解できた。 エリクトニオス : 他者の自我を顧みず、利用することしかしないお前を、 「神」と認めるわけにはいかない! アテナ : それならば、私も「悪」として振る舞うまでのこと……。 私のものにならない星なんて、なんの価値もないのだから!
- そしてエリクトニオスはアテナに取り込まれたクローディエンと融合することで、その魂を揺さぶり、アテナの行動を阻止しようとする。
エリクトニオス : 落ちこぼれのエリクトニオス……。 自分にしかできないことを探し求めていた男が、 ようやく、その役目を見つけられたよ。 ラハブレア : お前にしかできない……。 だからこそ、お前自身に決断を託した。 ラハブレア : ゆけ、息子よ。 お前は……私の誇りだ。 アテナ : エリクトニオス……あなた、何を……? アテナ : や……やめなさい! エリクトニオス! エリクトニオス : 俺はもう、お前の言葉になど従わない。 この記憶が、心が従うのは……。 エリクトニオス : 父と……友への想いだ!
アテナ : ぐっ、ぐぁぁああああ!!! アテナ : 力が抑えこまれる……肉体を、保てない!?
- こうしてクローディエンの肉体を取り戻す。
- 崩壊しつつあるパンデモニウムを逃れる光の戦士たちだが、エリクトニオスは母の最後を看取るためにその場に残る。
アテナ : あら、まだ母と話が……? アテナ : それとも、最後にやはり情が湧いて、 クローディエンの肉体を連れてきてくれたのかしら……? エリクトニオス : あいにく…… ここにいるのは、お前の記憶に焼き付いた残滓さ。 できることなんて、「悪」が滅びるのを見届けることくらいだ。 アテナ : それは、残念……。 本当に役に立たないのね。 エリクトニオス : お前が、そう作ったんだろう。