髙柳早紀(たかやなぎ さき)
- スクウェア・エニックスのゲームクリエイター
- 2018年時点での肩書は「クエストデザイナー」
- ※2022年も同じ肩書で自己紹介している。
- ※髙柳の髙は「はしご髙」
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概要
- 2013年4月スクウェア・エニックス入社
学生時代に出会った、ファイナルファンタジーやキングダム ハーツなどをプレイして、ゲーム業界で働きたいと思うようになりました。
専門学校は、プログラミング系統を学んでいました。学校はプランニングもさせてくれる場所だったため、どちらもバランスよく学んでいました。
- FF14の第5ビジネス・ディビジョンに配属
- クエスト班に配属となり、主に人型NPCコーディネイトを担当
- FF14チーム内での部門トップは前廣氏、直接の上司は石川夏子氏となる。
- 東京デザインテクノロジーセンター専門学校の下記インタビューで、「特別講師」として登場している。
- 株式会社スクウェア・エニックス×TECH.C.【TECH.C.在校生対談プロジェクト_vol.7】
- ※このインタビューには、「Mr.オズマ」として名が出ているバトルコンテンツデザイナー中川誠貴氏も登場している。
関わったコンテンツ
- コーディネイト担当
- パッチ2.1~:キャラクターコーディネイトを担当
- クエスト実装担当
14時間生放送
- 2018年9月1日の「5周年14時間生放送」の開発者パネルに登場し、「集落のできるまで」というテーマで話をした。詳細は後述。
2024年10月PaxAus
- 2024年10月のPaxAusで「クエストデザイナー」として登壇。※イベント開催時期は「黄金のレガシー」以降
- スタッフ/石川夏子氏と「Crafting Characters: The Style and Substance of FINAL FANTASY XIV(キャラクターたちのコーディネイトが決まるまで)」という内容で登壇した。
- ※講演の詳細はスタッフ/石川夏子氏の項を参照のこと。
- ここでは特にコーディネイトキャラクター廻りをサイト内再引用する。
- 【コーディネイトキャラクター】 ※基本的にはプレイヤーキャラクターや一般装備で作られるキャラクター。ただし一部はスペシャルパーツがあったりする。
- シューニェとウヴロ(シューニェズ・アポサカリー):尺の短さも考慮し、登場人物のコンセプトは極力わかりやすくしている。シューニェはトラル大陸に居る種族だと思わせるためにトラル大陸をお壊せる色合いに、またウヴロはオサード小大陸の山岳地帯に暮らすヴィナ・ヴィエラ族なので雪山らしい色合いでお願いをした。他に境遇や年齢、並んだ際の印象、生活などの情報を咥えて、できるだけシンプルに表現してほしいと、髙柳氏に発注をした。クエストの組み込みをしていた担当者が「顔がいい~」と言っていた。その情熱に押される形でこれでOKした。
- シリナ:「終節の合戦」があったため他のアウラ族と見分けが付く必要があった。なおかつ同じ文化圏に住んでいるのだから共通の要素も必要。それを既存の装備で満たすのが大変だった。アジムステップ草原の夕焼けに映える人物にしたいという思いも込めてコーディネイトした。夜のサドゥと昼のマグナイと。
- テスリーン:アムアレーンの旅立ちの宿で出てくるNPC。彼女は素敵な子ですが、一緒にいられる時間が極端に短いので、彼女の優しさや人当たりの良さが伝わりやすいようにしてほしいとお願いした。最初から死ぬとわかっているキャラクターをコーディネイトするのはカロリーが高く、微調整を何度も繰り返した。罪喰いになった後の姿(3Dデザイン→キャラクター作成)も必要なため、早々に発注しなければならなかった。そのため「漆黒のヴィランズ」で最初にコーディネイトしたキャラだった。
- ヴァルシャン:本体であるヴリトラとの共通性を意識して、後々本体が出てきたときに受け入れやすいようにした。角の色も特注で、ヴリトラに寄せて作っている。キャラモデリング班が丁寧にヴリトラの角に寄せたモデリングをしてくれた。ヴリトラの竜の眼をみぞおちあたりに格納しているという設定なので、そこが隠れる服にしてもらった。人形のカラダなので、目や口が無表情になったときに生気を感じないようなコーディネイトにした。
- 【全身オーダーメイドキャラクター】
- アートを元にキャラクターモデリング班、モーション班、カット班との相談を経てモデルが作成される。作成する中で、キャラクターのスケールつまり身長はゲームデザイナーの方で決めていく。登場人物を並べて、シナリオや演出的な要件を決める。このキャラクターはこのキャラクターを見上げてほしいから小さめで。など。
- スケールで特殊なものとして、アルマ(リターン・トゥ・イヴァリース)とリーン(第一世界)がある。彼女たちは子どものようにも見えるが、内部的な設定は(キャラクターモデル的に)成人ミッドランダー(ヒューラン)になっている(※おそらくキャラクターボーンの話)。そこに特殊なスケールをかけて通常の最小身長よりも小さくしている。たくさん活躍したり、戦うこともあるという設定だったため、(キャラクターモデル的に)成人の動きで揃えなければならない場面(条件?)があるため、こういう実装をしている。
- リーンを小柄にしているのは物語的な理由もある。彼女はサンクレッドに連れ出されるまでの長い間ユールモアで幽閉されていて人生経験も乏しかった。なので「ミンフィリア」と呼ばれていた頃は特に、実年齢より幼く身長も低く、ちょっと人形っぽい感じになるようにお願いをした。キャラクターの印象づくりでは、外見そのものや立ち方やしぐさも重要。
- コーディネイトキャラの続き
- オルシュファン:作った側として思い出深いのが、彼の髪の色。それまでのFF14ではどちらかというとリアル寄りの髪色が多く、こういうビビッドな髪色は使っていなかった。そんな中でオルシュファンはキャラ(設定?)としても振り切っているので試してみようかということになり、このサイドの高い水色の髪色となった。当時はまだ装備バリエーションも多くはなかったため(大変だった)。そのため重要なキャラをコーディネイトで作り上げるのは今の何倍も難しかった。結果的にはうまくハマってコーディネイトの幅が増えてよかった。
- FF14のキャラは等身が高めだがリアルすぎないという独特なデフォルメ具合となっている。だからこの髪色も馴染んだのではないかと思っている。実は他のキャラでもフォトリアル路線だと使えないキャラコーディネイトもいくつかある。
- その例の一つが暗黒騎士ジョブクエストに登場するフレイ。彼の顔を拡大すると真っ黒だが、その装備をキャラが着ると目のまわりだけくっきりと写る状態になる。フレイの場合は、この部分を影の色に合わせることで頭装備の奥で目だけが光っているような印象にしている。このフレイはちょうど実装予定だった装備と石川さんのやりたいキャラクターが合致した奇跡的なものだった。絶対この装備は使いたいーだけど目元だけはどうしてもあの見た目にしたーということで、力技であれを実現した。
- 力技で目元を暗くしているのはフレイだけではなく水晶公も。彼のフードの下の秘密を守るために、2つの技が使われている。水晶公を横から見ると、一般的なフードよりもかなり深い構造をしていることがわかる。違和感のないギリギリの深さまで深くしてもらった。フードを取るとこうなる。こんなふうに顔そのものに影を入れて彼の秘密を守っている。
- 目は特に強い意味を持つパーツだと思っていて、フレイは目だけが出ていることで素性は一切わからないけど言っていることは真摯であるということを強調したかった。反対に目元を隠した水晶公は、公正なキャラでありながら一番大事なことを隠しているということを演出している。
- もう一つ「目」に関する話。古代人たちの目。エメトセルクとヒュトロダエウスはエーテルがよく見えるが、あれほどの素質がなくとも古代人は魔法に親しんでいる。現代人(第七星暦人)よりもずっと魔法的なものを捉えやすく、力を持った瞳ということでこういうデザインを制作してもらった。ヴェーネスだけでなくエルピスにいる名もなき古代人たちの目にもそれぞれ輝きがある。コーディネイトの際には目の色や虹彩の色をこうしてああしてと考えるのが楽しかった。古代人たちはこの特殊な目を持つことでより存在感をましたのではないかと思う。
- なお7.0(黄金のレガシー)のグラフィックスアップデートに付随して、現在は彼らの目の輝きが抑えめになってしまっている。こちらはパッチ7.1でプレイヤーキャラクター関連の項目と同時に調整され、パッチ6.5時点の印象に近くなる予定とのこと。
- ヘルメスの場合。彼は汎用パーツを一部改造しつつコーディネイトによって制作したキャラクターの一人。生真面目で口数が少ない。けれど言動はとても優しいというポイントで発注を受けた。(髙柳氏は)第一印象で寝ていなさそうなお兄さんだなと思ったという。あまり喋らないなら表情で語るシーンも多いだろうと考え、目元の印象と寝ていなさそうな印象を目指した改造を(元モデルに対して)施している。目元はまつげの長さまで指定したり、輪郭も横から見た時にどう見えるかなども調整をしている。そうやって顔立ちはすんなり決まったが、最後の最後まで髪色で悩んでいた。より正確には髪色と連動しているまつげの色。ヘルメスは仮面を外しているシーンがほとんど物憂げな場面になっている。まつげで伏し目がちな印象を作りたかった。まつげの色が濃いと、まぶたの縁の黒と合わせて目元が陰っているように感じてしまう。一方でまつげの色が明るいと、毛一本一本の印象が強まって繊細さが際立つ。どっちを取るんだと。悩みに悩んで最後には現在のイメージカラーを採用した。
「集落のできるまで」
- MMORPGではあまり表に出ることのない設定部分だが、細かく説明されていたのでここで取り上げたい。詳細は、2018年14時間生放送 - FINAL FANTASY XIV - Twitchを参照のこと。
普段公開されない資料群であり、(ページ下部にもあるのですが)改めて著作権表示をしておきます。
アート・イラストなどはすべてスクウェア・エニックス社の著作物です。
FINAL FANTASY, SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are registered trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd. Copyright © 2010 - 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
クエスト班とは
- クエスト班の役割は次のように分かれている。
- シナリオの執筆とクエストのデザイン
- クエストの設計と実装
- 人が住まう集落のNPC配置と、そのコーディネイト
- 今回の話は、この3番の後者。
コーディネイト(NPC Design)とは
- FF14で登場するNPCには、大きく次の2種類がある
- 三面図のアートデザインから制作されるNPC(アルフィノ・アリゼーきょうだいや、アイメリク、ゴウセツなど)
- 汎用キャラクターメイキングパーツで構成されるNPC(エスティニアン、マキシマ、タタル、ハンコック、ロウェナなど)
- この後者をデザインして作り上げていく作業。
- 前者(例えばアイメリク)がオリジナル装備やオリジナル(フェイス)パーツを含むのに対して、こちら(ロウェナなど)はプレイヤーでも基本的にはそっくりなキャラを作成することができるということ。※一部スペシャルパーツが適用されていることがある。後述アサヒの場合など
- ※「何故全員デザインしないの?」という声もあるかもしれないが、三面図から起こすキャラクター一体をアートからデザインし、モデルを起こして動きもつけるというフル工程を踏むとなると膨大な製作時間がかかってしまう。FF14では1つの拡張パック(エクスパンション)ごとに数百体以上のキャラクターが登場する(例えば髙柳氏は、「紅蓮のリベレーター」では”200~300体”製作したと語っている)ため、それらを全部フル工程で制作することは事実上不可能なため、汎用的なNPCについては、プレイヤー向けにキャラクターメイキングで提供している部品で組み立てることで成り立っている。
集落を作ろう
- FF14のフィールド上に存在する「集落」を作り上げる作業。
- 主に、集落デザイン担当と、コーディネイト担当で分担して作り上げている。
- 段階的に次のように作業を進めていく。
- BG班作成のフィールド確認
- 世界設定班の設定原案を確認
- 集落設計(配置イメージ・配置NPCイメージ)
- レベルデザイナーやBGデザイナーに相談
- NPC仮配置 ※
- コーディネート設定 ※
- NPCへのモーションや演技付け ※
- ※付きを以下で説明
アジム・ステップの場合
- 上記「集落を作ろう」の5~7をアジム・ステップを例にして説明。
- 参考資料:命名規則/アウラの命名ルール ※以下の話では、アウラ族の中の細かい部族名が登場する。
NPC仮配置
- 注文表
- いろいろなデザイナー達から、「こういうNPCが欲しい」という要望リストが来るので、それをまとめる。
- 種族、性別、年齢(成人か)、武器の有無・種類(弓・剣)、部族(ケスティル族など。部族勢力により、配置する部族の数も考慮する)、その他コメント
- 仮配置:
コーディネート
- それぞれのNPCに合わせて、装備や髪型、服装、目の色などを設定していく。
- ウヤギル(Uyagir)族:千里眼を持っているという設定だったので、眼の片方違ったり。
- ドルゴノ:戦士クエストで登場するアウラ女性。
- ケスティル族:沈黙の民でしゃべらないという設定なので、口元を隠す装備。
- ガール(Gharl)族:メインクエストでしか登場しない。「終節の合戦」の始まりを知らせる部族。白い部族衣装。
- ボーズ売りのチャンブイ
- 再会の市の売り子
- (ものを売る)という設定から、邪魔にならないよう”袖まくり”をさせて、「再会の市」で最初に出会うのでかわいくした。※これらは設定されているわけではない。
→
- 明けの玉座のGUYS
- 集落担当が筋トレをしているNPCを配置することが多い。明けの玉座にもいた。
- ブドゥカ族のコーディネートは石川氏と一緒に決めた。ぴったりの装備があったのでそれに決まった。筋トレ組は肌艶を良くして、太陽が当たるとテカるようにした。ライトの当たり方なども見ながら設定した。
- 4.0では、こうしたNPCを200~300体は作っていった。FATEのNPCなども一緒に作っている。
重要NPCをつくろう
- 注文表
「シリナ」のできるまで
- まずは「戦う少女、天然で優しくて…」という設定から、前髪をおろしておしとやかに。
- 話を読むと、ぐいっと来れる子だということで髪を分けて額を出した。
- 顔もカットシーンで目立つので白く。
- 緑じゃないのではないかと、赤系統の中で色を選んで紫の髪型にしていた。これが一番長かった。
- その後部族装備も出来て、ピンクにした。可愛らしさと凛とした姿から。
「マグナイ」のできるまで
- マグナイができる前に、他のアウラをキャラを作っていた時に、偶然とってもかっこいいアウラが出来た。
- どうしても自慢してくて石川氏に「どうしよう、見てください」と送ると、石川氏が「どこかで使おう」という話になっていた。
- その”とってもかっこいいアウラ”が、後にマグナイに決まった。
- 金色の甲冑を着せたときもあった。石川からこれはちょっと…となって、いつものマグナイに落ち着いた。
オマケ「アサヒができるまで」
- このアサヒ・サス・ブルトゥス(Asahi sas Brutus)もアートが書かれていないキャラの一人。
- 当初コーディネートだけでやろうとしたが、話を読んでいると「これはかなり大事なキャラでは?」となった。そこでキャラデザイン班に駆け込んで相談をして、どうにかイケメンに変えて欲しいとお願いして変えてもらった。※つまり汎用パーツでは一部再現できない箇所がある。
- これにより育ちきっていないあどけない顔に。髪型も(アイテム班リーダーの)林氏に頼んで1枠もらった。
- (ストーリー展開上)テンションが変わるなら顔も変えてしまおう。ということで顔つきも変えた。だからアサヒは顔パーツが2つある。赤い枠(左側)のほうのフェイスが4.2のメインクエストの最後の直前まで。光の戦士とあの話をしているときから青い枠(右側)のフェイスに変わる。こういう2つも顔がある特殊なのはアサヒだけ。
- 眉毛が釣り上がる。目元も涙袋を増やして睨んでる感じに。口元も口角が上がっているが、無表情に近い。宿屋の「愛用の紀行録」でも2種類を確認できる。
グ・ラハが緑色だった話
- ※グ・ラハの項目よりここが良いだろうということでここに書いておきます。あっちに入れるとうるさい人が居るので。
- パッチ2.Xの途中くらいまではNPCコーディネートは現在アイテム班の林氏が担当しており、グ・ラハ・ティアのコーディネートも同氏が作ったのだという。
- ※林氏は明らかに「パッチ2.Xの途中くらいまで」と言っているが、上記で書いているように髙柳氏は「パッチ2.1~」とされているので、もしかすると並行していた期間があったのかもしれない。
- 最初に作ったグ・ラハは全身緑だったという。林氏が緑大好きなので。これで行くつもりで作ったが、最終的にはみなさんが知っている今の(赤黒な)グ・ラハに落ち着いた。
- NG出したのは吉田Pだったという。「なんでこんな緑なんだよ」と突っ込んだ。暁のメンバーは時間がない中で作られたので、普通のプレイヤーが着ている簡易装備で賢人をやっていたが、グ・ラハはようやくオリジナルの賢人を作るスタートだった。
- 林氏的には他のメンバーが地味だからということで、青と白と黒と赤は使わないでいこうということでこれにした。
- 吉田:他の暁メンバーと並べて違和感しか無い。もともと緑色の登場人物というのが苦手で、しかも全部緑かよというのがあって、設定を確認したらグ・ラハの目って紅血を持っているから赤くなるというのもあり、キャラ的にも熱血で元気というのもあるので、赤と黒で行けって変えさせたのだという。すると、吉田がそういう指示をしたために、しばらくコーディネートでは緑が禁止になっていたという。
- コーディネートもだし、装備品でも緑入れるのは禁止にしようとなった。
- 吉田:でも(結局グ・ラハ・ティアは)王道勇者感が出たから良かった。